共栄ニュース 2019年 10月号「最低賃金の上昇と価格改訂」

2019/10/10

共栄ニュース 2019年 10月号(Vol.236)ダウンロード

倉庫内入出荷請負業務、地場配送業務を手掛けているA社は、慢性的な赤字に悩んでいます。原
因は何といっても安い料金にあります。同社の売上高に占める人件費比率は80%近くを占めていま
す。従来から荷主企業に対し、折に触れ値上げ交渉を行ってきましたが、満足な回答が得られず現
在に至っています。
この度、A社は場合によっては「撤退」も辞さないとの強い思いを抱き、従来の口頭による値上げ
要請ではなく、現状の経営状況のデータと価格改訂の背景となる理由を詳細な書面にまとめて提出
することにより、少なくとも現状の料金の20%以上の価格改訂をお願いしたとのことです。
同社のB社長によると、過去において、今回ほど真剣に値上げ要請の資料を作成したことはなく、
同時に資料作成の過程において改めて多くの学びを持つことができたとのことです。

※同社が作成した資料は次のような項目内容となっています。(項目のみ一部抜粋)


<価格改訂申請に係る背景>

1.人手不足の深刻化と人件費の高騰化
1)離職者の増加と求人倍率の上昇による募集費用の増大
2)派遣労働者依存割合の拡大
3)最低賃金の上昇による人件費の増加と賃金水準の高騰化

2.バラ取扱い割合の増加による業務効率の低下
倉庫内業務における、特定部門の総取扱い数量に対するバラ取扱い数量の割合が高く、
これらが、当社の労働生産性(1時間当たりの収受金)悪化の要因となっています。

3.働き方改革推進等による法的・社会的規制の強化
1)同一労働同一賃金制度の導入による人件費コストの負担の増大化
①派遣労働者コストの上昇
②社会保険の加入、福利厚生制度の整備
③時間当たり賃金、諸手当の均等支給
2)長時間労働規制の厳格化、有給休暇取得促進、義務化による要員不足
①長時間労働の指導・監督の強化
②有給休暇の強制付与
③面接制度の義務化等の安全衛生体制の整備


多くの物流事業者にとっては、顧客企業からの請負料金の多寡は、死活問題です。
コストに見合う適正料金について顧客企業の理解を得るためには、現状についての詳細な資料作り
が交渉の始まりと言えます。