共栄ニュース 2019年 11月号「パワハラ防止法の成立」

2019/11/14

共栄ニュース 2019年 11月号(Vol.237)ダウンロード

今や、パワーハラスメント(パワハラ)は、セクハラと並び、企業においては大きなリスク要因

となっています。労働問題の相談機関においても職場における虐めに関する相談が最も多くなってい
ます。しかし、ある程度明確化されているセクハラと異なりパワハラについては注意や教育指導と
の区別がつかず、多くの企業にとっても防止についての明確な基準ができていないのが現状です。
大阪市内にあるA社の総務部長は、部下であるB社員の日頃の職務に対する不満がある中、某日、
決められた日の会議でのB社員が準備すべき資料が追い付かず、前日の夜中にメールで厳しい叱責
と共に、「寝ずに今日の朝までに作成するように」とのメッセージを送りました。
その後、「寝ずに」との発言が問題となり、B社員は訴訟も辞さないと態度を硬化させ、結果的に
は会社側が一部非を認め謝罪と共に、いくばくかの支出を余儀なくされました。
本年6月、パワハラ防止法が成立し、来年の4月(中小企業は2年間の猶予措置)から
各企業において具体的なパワハラ対策措置が義務化されます。
このことを踏まえ、今般、厚生労働省から「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理
上講ずべき措置等に関する指針の素案」が提示されました。
今回提示された指針の素案では、パワハラに該当する例・該当しない例が、
①身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な要求、
⑤過少な要求、⑥個の侵害という典型的な6類型に分けて示されています。
また、項目ごとに、該当する例、該当しないと考えられる例が具体的に公表されています。
例えば、②の精神的な攻撃の具体例としては、下記の項目が挙げられています。
※同社が作成した資料は次のような項目内容となっています。(項目のみ一部抜粋)

 

<精神的な攻撃:該当すると考えられる例>


■人格を否定するような発言をすること。(例えば、相手の性的指向・ 性自認に関する
侮辱的な発言をすることを含む。)
■業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り 返し行うこと。
■他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う こと。
■相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の
労働者宛てに送信すること。

 

<精神的な攻撃:該当しないと考えられる例>


□遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動
□行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をする
こと。
□その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、
強く注意をすること。

 

上記、素案については、現段階では正式決定ではありませんが、各企業においては、資料を参考の
上、パワハラ防止法の成立に向けて具体的な防止マニュアルの作成が求められます。

※本内容を無断で転載することを禁じます。