共栄ニュース 2020年11月号 「非正規社員の雇用」

2020/11/06

共栄ニュース 2020年 11月号(Vol.249):ダウンロード

物流業界では、労働力不足や同業者間における価格競争に起因して、業務の一部を契約
社員、パート・アルバイト等、いわば非正規社員に依存している企業が数多く存在してい
ます。これらの企業において大きな影響を受けると思える正規社員と非正規社員との待遇
格差について、最高裁判所で注目すべき判断が10月13日、15日の両日に下されました。


<報道による待遇格差を巡る最高裁の判断の概要>
1.日本郵便の契約社員(集配関連業務)
(判断内容) 正社員との待遇格差は不合理である
・年末・年始等の最繁忙期の休日勤務の手当(年末年始手当)
・扶養手当等5種類の手当休暇制度は、すべて支給対象となる

2.大阪医科薬科大学の元アルバイト職員(秘書関連業務)
(判断内容) 格差(契約職員に対する賞与不支給)は不合理とまでは評価できない
・賞与には正社員の人材確保、定着の目的がある
・試薬の管理などアルバイトと業務内容が異なる

3.東京メトロ系列会社メトロコマース元契約社員(売店関連業務)
(判断内容) 勤続年数が10年前後であっても退職金の不支給は不合理とまでは評価
できない
・退職金には正社員の人材確保、定着の目的がある
・トラブル処理など契約社員と業務内容が異なる


非正規社員に対する賞与、退職金については不支給を認め、各種の休日の付与、諸手当
については、責任の程度に関係なく正規社員と同等にしなければならないということです。

報道では詳細は明らかにされていませんが、格差の是非について、それぞれの判断のポ
イントとなった下記の項目に注意する必要があります。
1)就業規則の有無
上記3社には、何れも正社員、非正規社員ごとの就業規則が作成されており、裁判官が
事実認定する場合の(企業側にとって)大きなプラス要因になっていた。
2)正規社員、非正規社員間の職務の内容等の区分が明確化されていた。
今回の判決では、下記の項目についてそれぞれ詳細に比較検討されていました。
①業務の内容 ②業務に伴う責任の程度 ③業務の内容・配置の変更の範囲
④その他の事情
特に上記①~③について、正規社員、非正規社員間の区分を明確に設けていたことが、
結果的に会社側に有利に働きました。
3)正社員登用制度
・被告の3社は、いずれも正社員登用制度をルール化していました。
・今回の判決では、旧労働契約法20条(新パート有期雇用労働法第8条)でいう「その
他の事情」として、上記ルール化が考慮されました。
非正規社員を雇用する場合は、正社員登用制度の規定化は非常に重要と言えます。
・今後とも、非正規社員を雇用する企業においては、「同一労働同一賃金」の考え方が
浸透していく中
、以上の点を踏まえた労務管理施策が求められます。