共栄ニュース 2020年12月号 「70歳までの就業機会の確保と事業者の留意点」

2020/12/07

共栄ニュース 2020年 12月号(Vol.250):ダウンロード

 高齢者雇用安定法が改正され、来年4月以降事業者は、雇用する労働者に対し70歳までの
就業機会の確保が義務化(努力義務)されます。
 これまでの高齢者雇用安定法(65歳までの雇用確保(義務))は、①60歳未満の定年禁止、
②65歳までの雇用確保措置を定めています。①は事業主が定年を定める場合は、その定年
年齢は60歳以上としなければならないということです。②は定年を65歳未満に定めている
事業主は、ア.65歳までの定年引上げ、イ.定年制の廃止、ウ.65歳までの継続雇用制度(再雇用
制度・勤務延長制度等)の導入のいずれかの措置を講じなければならないというものです。
①②いずれも当該労働者を60歳まで雇用していた事業主を対象に義務づけられています。
 今回の改正では、65歳から70歳までの就業機会を確保することを目的に、来年4月1日か
らは、上記65歳までの雇用確保(義務)に加え、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が
新設されました。労働者を60歳まで雇用していた事業主が対象となります。


①70歳までの定年引上げ
②定年制の廃止
③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
 1)事業主が自ら実施する社会貢献事業
 2)事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
※④⑤は創業支援等措置(雇用によらない措置)となり、過半数労働組合または過半数
労働者代表等の同意を得て導入します。


 

◆改正法施行による留意点

上記改正法の施行を踏まえ、事業者は次の点に留意するようにしてください。
①70歳までの就業確保措置は努力義務となるため、対象者を限定する基準を設けること
が可能となります(70歳までの定年引上げ、定年制の廃止を除く)。ただし、対象者の基
準を設ける場合は、労使間で十分に協議した上で過半数労働組合または選任された過半
数代表労働者の同意を得ることが望ましいとされています。また、労使間での十分な協
議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするな
ど法の趣旨等に反するものは認められません。
(不適切な例として、会社が必要と認めた者に限るなど)。
②継続雇用制度、創業支援等措置を実施する場合において、「心身の故障のため業務に
耐えられないと認められること」「勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職
責(義務)を果たし得ないこと」といった事項等を就業規則や就業支援等措置の計画に記
載した場合には、契約を継続しないことが認められます。

 

高齢労働者については精神的にも肉体的にも個人差が大きく、労働者本人の意思だけで
は就業の継続の可否を判断しかねる場合が多くあります。
この機会に規程の整備を検討
される必要があります。