共栄ニュース 2021年1月号 「3月以降の雇用調整助成金について」

2021/01/05

共栄ニュース 2021年 01月号(Vol.251):ダウンロード

令和2年はコロナで始まりコロナで終わったといっても過言ではありません。
コロナ禍による事業活動の休止、縮小により多くの事業者が厳しい経営環境下に置かれました。運
送事業者にとっても例外ではなく、定期便トラックの減便、構内作業量の減少等により、従業員の
雇用維持が大きな課題となりました。
一般的にトラック運転者の賃金は歩合給の比率が高く、仕事量の減少はすぐに毎月の賃金額に反
映されます。また一旦退職させると、今後荷量が復活した際に再雇用の目途が立たなく、業務に大
きな危険性が生じます。これらの多くの事業者にとって、雇用調整助成金制度は有難く、制度の活
用によりとりあえず一定の賃金水準が維持され、ひいては雇用の確保にも繋がりました。
現在の雇用調整助成金制度は一応、令和3年2月まで継続されることが決まっていますが、現時点
での見通しとしては3月以降については次のようになります。


◆令和3年2月末で現行の特例措置は終了予定
新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置として、令和3年2月末まで日額
上限額の引上げ等がされていますが、3月以降段階的に縮減し、5~6月にリーマンショック時
並みの特例とするとの方針が、12月8日にまとめられた総合経済対策で表明されています。
そして、令和3年1月末および3月末時点の感染状況や雇用情勢が大きく悪化している場合、
感染が拡大している地域や特に業況が厳しい企業について特例を設ける等、柔軟に対応する
とされています。

◆3月以降の雇用調整助成金の特例措置について
参考としてリーマンショック時の主な特例措置の内容を紹介しますと、次のとおりです。
(実施時期にはばらつきがあります)。

1)助成率:中小企業 4/5、大企業 2/3
(コロナ特例措置では雇用を維持している場合、中小企業10/10、大企業3/4)
2)生産指標要件:最近3か月の生産量等が直前3か月または前年同期と比べて原則5%以上減
少(コロナ特例措置では1か月5%以上減少)
3)対象被保険者:被保険者期間6か月未満の者も助成
(コロナ特例措置では緊急雇用安定助成金により被保険者でない労働者も助成)
4)支給限度日数:3年300日(コロナ特例措置では令和2年4月1日から令和3年2月末まで
の期間+1年100日、3年150日)

◆3月以降は在籍型出向による雇用維持支援にシフト
総合経済対策では、「産業雇用安定助成金(仮称)」を創設し、出向元と出向先の双方を支援す
るとともに、出向元企業への雇用調整助成金による支援、労働移動支援助成金による受入れ企
業への支援も引き続き実施するとされています。
現在従業員を休業させ雇用調整助成金を活用している企業においては、上記のような変更へ
の対応を検討しておく必要があります。

◆人手不足企業向けには新たな雇入れ助成も
コロナ禍による離職者等で、就労経験のない職業に就くことを希望する求職者を一定期間試
行雇用する事業主に対する賃金助成制度(トライアル雇用助成金)を創設するとともに、紹介予
定派遣を通じた正社員化(キャリアアップ助成金)を促進するとされています。


人手不足に悩んでいる企業においては、こうした制度の活用による人材確保も検討してみるのも
よいかもしれません。