共栄ニュース 2021年10月号 「労働時間管理の適正化」

2021/10/06

共栄ニュース 2021年 10月号(Vol.260):ダウンロード

先般、厚生労働省は令和2年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施し
た監督指導結果を公表しました。
この監督指導は、各種情報から時間外、休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考
えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事場を対
象としています。

◆監督指導の実施事業場数と監督指導の主な内容


対象となった24,042事業場のうち、8,904事業場(37.0%)で違法な時間外労働が確認されました。
このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は2,982事業場
(違法な時間外労働があったもののうち33.5%)でした。
そのうち、月100時間を超えた事業場は1,878(21.1%)、月150時間を超えた事業場は419(4.7%)で
した。中には200時間を超えた事業場も93事業場(1.0%)ありました。また、賃金不払残業があった
ものは1,551事業場(6.5%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものは4,628事業場(19.2%)
となっています。


◆主な健康障害防止に関する指導の状況


健康障害防止に関する指導の状況(健康障害防止のため指導票を交付した事業場)としては、
①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものが9,676事業場(40.2%)、
②労働時間の把握が不適正なため指導したものが4,301事業場(17.9%)となっています。
②の指導事項の中では、「始業・終業時刻の確認・記録」(2,609事業場)のほかに、自己申告制に
よる場合の「実態調査の実施」(1,806事業場)の数が目立っています。


◆労働時間の管理方法の内訳


監督指導を実施した事業場において労働時間の管理方法を確認したところ、「使用者自ら現認」
が2,109事業場、「タイムカードを基礎」が9,088事業場、「ICカード、IDカードを基礎」が4,497事業
場、「PCの使用時間の記録を基礎」が1,680事業場、「自己申告制」が7,126事業場でした。自己申告
制を採用している企業は多いようですが、指導事項をみても管理が不十分な企業も少なくないこと
がわかります。各企業でも労働時間の管理方法についてはあらためて確認したいところです。
他の業種に比べ残業時間の多い運送業界においては、労働時間管理は特に重要となってきます。

※最近はデジタルタコグラフによる一元管理が普及していますが、適正な管理を行うためには乗務
員の方々による「正しい機器操作」がポイントとなります。
操作ボタンの入力間違い、納品先指定時刻と大幅に異なる出庫時刻の打刻、休憩時間の意図的な
削除等があれば、実勤務時間の把握が困難となります。
大型車による長距離輸送を主としているA社においても労働時間はデジタコタコグラフで管理して
いますが、乗務員に対する機器操作指導が不十分で上がってくるデータが実際の労働時間の実態と
異なる状況が多く見られています。同社では運転日報による紙面による管理も並行して行い、デー
タとの差異については労使双方の現認方式を採用しています。今後とも運送業界においては長時間
労働の是正に努めると同時に実態に応じた正しい労働時間管理が求められます。