共栄ニュース 2022年2月号 「物流業の事業形態と事業領域」

2022/02/03

共栄ニュース 2022年 2月号(Vol.264):ダウンロード

関東首都圏エリアで広く物流事業を行っているA社のX社長は、自社の事業の位置づけと今後の方
向性について悩んでいました。その理由は、構内作業や配送運賃の料金決めが顧客である荷主企業
主導で中々値上げが認めてもらえず、経営的に赤字体質からの脱却が難しい点にあります。このま
ま荷主企業の下請け体質を続けると事業の将来性が覚束なくなるとの危機感にあります。
ヤマト運輸で宅配便サービスを開始された故小倉元会長によれば、物流業の事業形態は下記のよ
うにランクされます。


①第1段階    下請け・従属型
下請けによる単純な輸配送業務、構内作業業務

②第2段階     自立・パートナー型
輸配送業務だけでなく保管、入出庫、梱包、流通加工などの
関連業務を引受ける。物流管理業務が必要
荷主との関係は対等で業務分担的な役割を遂行

③第3段階     主体性企業型
荷主の元請けとしてトータルな物流を担当するレベルの企業
輸配送、保管、荷役、包装、在庫、加工、納品代行、情報処
理まで一括して引受ける

④第4段階     企画・提案・商品開発型
荷主に対して戦略的な物流システムを共同開発し、企画提案できる。
複数の荷主、荷物を獲得し一貫物流、共同輸配送を推進する


市場におけるポジショニングについても下記のように分類されます。
広い
↑         ③企業規模拡大型   ④総合物流志向型
↑         ①特定荷主依存型   ②物流機能重視型
狭い            (物流サービス技術)
(市場の拡がり) 低い→→→→→→→→→→→→→→→→高い


①特定荷主との取引関係をもとに、安定的な受注、収益を確保している
特定荷主の依存度が高く、現状維持型な企業
②総合化、多角化は考えずに、配送、構内作業業務に徹し、機能向上を図り専業化を目指す
③収益を犠牲にしても荷主拡大、売上拡大を目指す
④市場拡大、物流サービス拡充を図り、高付加価値分野を開拓しようとする領域


A社は社内で協議・検討の上、今後の方針として、事業形態については第2段階、市場における自
社のポジショニングについては②を選択しました
。X社長の表現によれば「背伸びをしない経営」
ということです。限られた人材の中、既存業務及び付随関連業務に特化し専門性を磨くことにより
荷主企業の信頼性を獲得すると同時に、従来の売上規模拡大政策を改め、上記②のゾーンを目指す
ことにしました。その結果、一部の業務撤退により、売上高は従前に比べ10%下がりましたが利益
率は大幅に改善されたとのことです。明確な経営方針を決めることがいかに大切かということが
理解できます。