共栄ニュース 10月号「1ヶ月単位の変形労働時間の活用」

2022/10/04

共栄ニュース 2022年 10月号(Vol.272):ダウンロード

X県にあるA社は従来大型車(10t)中心の輸送業務を担っていましたが、最近新規顧客との取引を開始し、
新たに4t車を稼働させることにしました。
 ところが乗務員の勤務パターンが既存の業務とは大きく変わり、配車担当のYさんは頭を痛めることに。
今までの大型乗務員については日々の運行状況がほぼ一定のため、乗務員の勤務については1年間の変形労
働制の採用により年間休日(105日)の確保のみに留意すれば良かったのですが、今回の4t車の配送業務は
原則365日稼働で、日々の繁閑の差も著しく、直近にならなければその日その日の労働時間が計算できない
ため、無駄な残業時間が多く発生してしまいました。折角の新規事業ということで意気込んで事業を開始し
たにもかかわらず、収益性については当初の見込みとは程遠いものとなってしまいました。
 そこでYさんは専門家の助言を受けて、従来の1年単位の変形労働時間制度を4t車乗務員に限っては1ヶ
月単位の変形労働時間制を採用することにし、日々の所定労働時間も業務の性質上、日中の休憩時間がとり
やすいとのことで1日の所定労働時間を8時間から7時間40分に変更しました。Yさんにとって変更の最大
の利点は、1年単位の勤務割だと1ヶ月前までに作成する必要がありますが、1ヶ月単位なら当月開始日の前
日までに勤務割を作成すれば良い点です。また年中無休の配送業務ですので毎月8日の休日を付与すれば労
務管理上問題がないので、閑散日の平日に休日を設定し、配送が混みあう祝日、土曜日、日曜日は出勤日と
することも可能になりました。また1ヶ月の法定労働時間内かつ拘束時間の制限内であれば1日、1ヶ月の
残業時間の制限もありません。

1日の所定労働時間と1ヶ月の必要な休日との関係は以下の通りです。

【休日の考え方】1日所定労働時間7時間40分採用の場合、8日間の休日を付与
31日の月(23日勤務)    7.66H✕23日=176.18H <177.1H(法定労働時間)
30日の月(22日勤務)    7.66H✕22日=168.52H <171.4H(法定労働時間)

【残業時間の考え方】
①1日の所定労働時間が8時間以内(例:7時間40分)の場合
     残業対象時間 → 8時間を超えた時間
②1週間の所定労働時間が40時間以内(38時間20分)の場合
     残業対象時間 → 40時間を超えた時間
③1ヶ月の総労時間が法定労働時間を超えた場合 → 法定時間を超えた時間
※①②③の内、重複した時間は支払い不要

業務の繁閑の差が大きく、直近にならなければ予定が立てにくいといった場合は、ぜひ1ヶ月単位の変形
労働時間制度の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。