共栄ニュース 11月号「トラック乗務員の残業時間」

2022/11/01

共栄ニュース 2022年 11月号(Vol.273):ダウンロード

 首都圏にあるA社は地域の配送業務を行っています。A社の悩みは残業時間で、乗務員1人当たりの1か
月平均残業時間は約80時間となっています。
 同社は日給月給制を採用しており、平均的な乗務員の賃金は手当込みで日給12,000円です。したがって毎
月の残業手当は80時間残業の場合150,000円になります。
 2023年4月から、これまで中小企業に対して猶予されていた60時間を超える残業時間の割増率が従来の
25%以上から50%以上になり、この制度が適用されると60時間を超える20時間分については50%以上の割
増率の適用が義務付けられます。
 深夜(22:00~5:00)の時間帯についても1か月60時間を超える時間については75%以上の割増率となり
ます。休日労働については、法定休日に行った労働時間は残業時間に含まれませんが、それ以外の休日に行
った法定時間外労働は含まれます。つまり、法定休日と法定外休日を明確に定める必要があります。
 A社のように恒常的に時間外労働が60時間を超えることが見込まれる場合については、割増賃金の代わり
に有給の休暇(代替休暇)を設けることができます。

60時間を超える残業時間の対応としては次の2つの対応が考えられます。


(1)割増賃金率の引上げ
 60時間を超えた時間に対して50%以上の割増賃金を支払う

(2)代替休暇の活用
 労使協定を締結し、割増賃金率の引き上げ分(25%以上)の支払いに代えて代替休暇を与える


60時間を超える残業時間について代替休暇を与える場合の具体的な算定方法は次の通りです。

 代替休暇を付与することのできる期間は、残業時間(法定時間外労働)が1か月60時間を超えた月の末日
の翌日から2か月以内です。
 代替休暇の単位は、1日、半日のいずれかによって付与することとされていますが、端数の時間がある場合
は労使協定で他の有給休暇と合わせて付与できます。例えば1日の所定労働時間が8時間で代替休暇の時間
数が10時間ある場合においては、8時間を1日分の代替休暇として付与し、残りの2時間を手当として支払
うことが可能です。あるいは、残りの2時間をその他の有給休暇と合わせて休暇として取得することも考え
られます。
 1か月の残業時間が60時間を超えることが常態化している乗務員については、来年4月以降は超えた時間
について50%の割増賃金を支払うか、当該時間数を代替休暇で対応するかの選択について会社としても検討
する必要があります。