共栄ニュース 12月号「嘱託乗務員の無期転換ルール」

2023/12/01

共栄ニュース2023年12月号(Vol.286):ダウンロード

 大阪府下で運送業を営んでいるA社では定年退職は60歳となっており、それ以降も引続き就業
を希望する者については1年ごとの有期雇用契約を締結し、65歳までの継続雇用を可能とする制
度を導入しています。
 平成30年に、有期雇用契約は5年経過すれば労働者からの申出があれば無期雇用に転換する
ことができる
制度が定められ、そのときにA社では専門家のアドバイスを受け、60歳定年後の乗務
員が65歳になった時点での無期雇用転換を防止するために「第2種計画認定」の申請を行いまし
た。この計画が認められた場合は、定年後引続き有期契約で雇用された社員については契約期間が
5年を経過しても無期転換権の行使ができない
ことが可能となります。
 A社においても乗務員の不足は恒常化しており同社では他社を退職した60歳以前の乗務員を1
年間の有期契約社員として採用し続けてきました。
 これらの乗務員については1年ごとの期間契約ということで特に定年の定めはしていませんで
した。

 先日、5年前に57歳で採用したB乗務員から、入社後5年経過したので無期契約にしてほしいと
の申し出がありました。A社の社長は、「当社では60歳以上の社員は、契約期間が5年経過しても
無期転換できないとの申請を労働局に行っており、就業規則にもその旨記載されている」とBさん
の無期転換の申出を拒否しました。
 労働契約法第18条第1項で、同一の使用者との間で有期雇用契約が更新され、通算5年を超え
たときは、労働者の申し込みにより無期雇用労働契約に転換できる
と定められています。これによ
りBさんは入社後5年を経過しているため無期転換権を行使することが可能となります。会社の主
張する第2種計画認定(無期転換権行使除外ルール)を受けていたとしても、この制度は定年後引
続き雇用する再雇用社員を対象としたものであり、契約当初から定年の規定のなかったBさんには
適用されません。
 結論として、A社の主張は退けられBさんの要求が認められました。
 今後、A社はBさんが働くことができる限り、法的には定年なしとなり「永久的に」雇用する義
務が発生します。定年なしの乗務員は特定の時期に自動的に退職することになりません。
 会社が一方的に雇用契約を終了させるためには、解雇権濫用法理(労働契約法第16条)の適用
を受けますので会社都合で辞めてもらうためのハードルが高くなります。基本的には、A社として
はBさんには乗務員としての業務が可能な範囲で働いてもらい、本人からの退職の申出が出るのを
待つ以外方法がありません。
 今後、Bさんのケースを防ぐためには、有期雇用社員の更新上限を厳密に定めるか、更新上限
を超えて契約更新すべき労働者であれば、無期転換後、第2定年(例65歳以上)の定めを規定化
することが有効と考えられます。65歳以上の無期転換行使後の定年年齢の定め方については特に
法規制はなく、無期転換行使後一定期間ごとに定めることも可能です。


LINEヤフーは11月27日、第三者による不正アクセスを受け、40万件を超える個人情報が漏え
した可能性があると発表しました。不正アクセスの原因は、LINEヤフーの委託先の企業の従業員
が所有するパソコンがマルウェアに感染したこと
と説明しています。ユーザー側での対応は不要で
すが、LINEヤフーを装ったメッセージには注意するよう呼びかけています。(LINEヤフー公式サイト)
※マルウェア:悪意のあるソフトウェア。ウイルス、ワーム、トロイの木馬、スパイウェアなど。


※本内容を無断で転載することを禁じます。