共栄ニュース 2月号「請負乗務員」

2024/02/01

共栄ニュース2024年2月号(Vol.288):ダウンロード

大阪府下にあるA社は、請負制の乗務員を数名採用しています。雇用契約ではなく請負制なので使用者雇用者の関係は成立せず、労働基準法は適用されません。労働時間の制約はなく勤務時間は原則的にフリーです。業務災害が生じた場合の労災保険の適用はありません。
A社だけでなく運送業界、特に軽貨物配送を中心とした業務においては請負制の乗務員は多く見られます。請負制の乗務員を多く採用している企業において、一部の請負制乗務員が組合を結成し、請負先企業に対して団体交渉の実施を要求している事例も生じています。運送業界における請負制乗務員は法的に労働者に該当するか否かは微妙な判断が求められます。

最近、厚生労働省より、委託物流事業者から再委託された配送員(個人事業主扱い)の報酬(賃金)不払いについて労働基準監督署の判断が紹介されました。
趣旨は、契約上は請負制乗務員が労働者であるか否か、仮に労働者であると判断された場合、法に定められた賃金が正当に支払われていたかです。これらについて以下の項目が示され実際の状況が紹介されました。


(1)使用従属性の判断について
①仕事の依頼については、本人の希望を聞いた上で個別に調整・決定し、月単位でシフトが組まれる。無断欠勤の場合には、契約書等において1回当たり1万円の違約金が発生する。
②契約書等において請負時のルールが定められ、当該ルールに基づく配送が義務付けられており、ルールに従わない場合は罰金等のペナルティが課されることから、業務遂行上の指揮監督あり。
③業務時間は、<8時~17時、15時~22時、17時~24時、6時~22時、8時~24時>の中から選択する制度となっているが、 始業・終業時刻が定められ、業務時間が指定されていることから、拘束性あり。
④本人に代わって他の者が労務を提供することは認められていないので代替性なし。
(2)報酬の労務対償性に関する判断基準について
報酬は、1日当たりの日給制(約15,000円)で支払われている。
また、業務時間内に荷物を配りきれない場合は、1時間当たり1,000円が別途支給されることになっているが、報酬が日単位で計算されていること、また、業務時間内に荷物を配りきれない場合は、時間に応じて追加で報酬が支払われていることから、労務対償性あり。
(3)その他労働者性を判断する補強的な要素について
配送に使用する軽自動車は元請事業者からのリースでリース料は本人負担。
他社の業務に従事することは契約上制約されていない。また報酬は本人が確定申告を行っており、労働保険の適用はなく、福利厚生等の適用もない。


 

労働基準監督署は、以上のことを踏まえ、業務遂行上の指揮監督関係や時間的拘束性が認められることや、報酬の労務対償性が強いこと等を総合的に勘案し、労働基準法上の労働者に該当するものと判断しました。
A社のように乗務員を業務委託の形式で請負乗務員として使用すれば労基法上の適用は除外され、労務管理面としては楽に思えますが、実態で判断されますので留意する必要があります。

 

 


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