共栄ニュース 1月号「改善基準告示違反の厳罰化」
2025/01/06
食品配送を運営しているX社は、今年度に改正された改善基準告示を遵守するために社内のシステムを改善し、配車担当者が乗務員の1日の拘束時間、1か月の拘束時間を厳しくチェックしています。しかし全車両(30台)の内2~3名の乗務員については運行ルートの関係上、制限された拘束時間をオーバーしていました。先日、所轄の労働基準監督署の監査が入り、これについての是正勧告があり改善報告の提出を余儀なくされました。全体から見れば「ほんの僅かな違反」と言えますが、違反は違反です。
従来からトラック運転手については、他業種に比べ長時間労働の定常化が社会問題となっていました。トラック運転手の長時間労働を是正するため、2024年4月1日からトラック運転手の拘束時間等に関する規制が強化されたことにより輸送能力が最大14%不足するのが「物流2024年問題」です。
トラック運転手の拘束時間等は、厚生労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、「改善基準告示」)に定められています。改善基準告示は、一日の拘束時間のほか、月間、年間の拘束時間等が定められていますが、改正後の拘束時間の減少幅は年間上限が最も大きくなっていることから、年間拘束時間の上限が問題となる2024年度後半に輸送能力不足がより深刻化すると考えられています。その結果、年度後半になるほど運送を断られる場合や、改善基準告示違反が出てくる可能性が懸念されていました。X社の場合にも見られるように顧客の要望に応えるためにはやむを得ない場面が出てきます。
このような状況ですが、国土交通省はトラック運送の適正化を図るため、飲酒運転の厳罰化等と合わせ、改善基準告示違反についても行政処分量定を2025年初に引き上げる方針を示し、それに伴い改善基準告示違反に対する行政処分量定の引き上が2024年10月1日に前倒しで施行されることになりました。
勤務時間違反等による行政処分は、違反件数に応じて車両停止等が科せられます。6件以上の違反で量定が引き上げられ、また車両停止の上限(現行40日車)が廃止となります。改善基準告示の改正によりトラック運転手の拘束時間が従来に比べて減少しましたが、これに違反した運送会社は、さらに長期間にわたってトラックを使用できなくなります。
(改善基準告示等違反に対する行政処分量定の改正)
また運送会社に対する規制強化が進む中、運送を依頼する荷主の側にも法令遵守の意識が求められています。荷主等に対する規制強化としては、特に取扱貨物量の多い事業者を「特定事業者」として指定し、物流統括管理者の選任や物流効率化に関する中長期計画の策定、定期報告の実施等を求めています。