共栄ニュース 12月号「やる気のない乗務員の対応」
2025/12/04
会社側のやる気のないベテラン乗務員に対する取扱い事例です。
会社は勤続20年以上のベテラン乗務員(Y)の取り扱いにほとほと手を焼いていました。Yは勤労意欲がなく、通常は5-6時間で終了できる業務をわざと(?)8時間かけ、本社との連絡がとれないこともしばしばでした。同僚からも嫌われ、配送先の顧客の評判も芳しくありません。配車係の指示に対しても常に不満を述べ、時にはあからさまに反抗します。一度「厳重注意書」を交付しましたが、その時には逆に開き直り、「何かあれば組合に駆け込む」と逆に会社を脅すかのような態度をとっていました。
本音を言えば辞めてもらいたいのですが、本人からの退職の申出はなく、さりとて解雇が認められるほどの明白な違反行為はありません。
会社は顧客や社内への悪影響を懸念し、何らかの対応を迫られていました。解雇について知り合いの弁護士に相談したところ、現状では解雇は困難との回答でした。しかし方法によっては退職への道筋をつけることは可能ということでした。
Y乗務員の認識は、「自分は運転業務には習熟しており、別に指示がなくてもやっていける」「今のままでも会社は大した手段はとれない」「働かなくても給料はもらい続けることができる」ということでした。会社は弁護士のアドバイスを参考に、これらの間違った思い込みを修正させることについてのステップを踏むことにしました。
具体的にはY乗務員の意識を次のように修正させることを考えました。「これは大変なことになった。どうも会社の対応がこれまでと違う」「今後は自分の働き方、考え方を受けいれられないかもしれない」と認識させることでした。
会社側の具体的な対応は次の通りでした。
(1) 指導チームの立ち上げ
Yの勤務ぶりの改善を求めるためには、指導に取り組む指導担当者を決める必要がありました。会社は総務部主任のXさんを指導担当者に選び、他の2人とチームを編成し、Yに対する指導を担ってもらうことにしました。
(2) 会社が求める業務水準の明示
Yは勤続20年以上のベテランであり、通常の運転業務については十分な経験があり、会社から特に細かい指示がなくても大きな支障はありませんでした。また運転業務が主に社外であるために、会社が仕事ぶりを直接、細かく把握することが難しい状況でした。
Yの立場からすれば、会社が求める業務の水準が不明確で、「やる気がない」と言われても納得できず、自らの仕事ぶりについて何をどのように改善するのか見当がつきません。
会社は、Yに対して改めて業務マニュアルを提示し、業務内容についても責任の範囲、達成すべき基準を明確にする必要がありました。そのために、日々の業務日誌を工夫するようにしました。
Y専用の業務日誌に新たな記載項目を追加し、行った項目を具体的に記載させることにして、毎日終業時までに提出することを義務付けました。
記載項目の例として、毎日誰とどんなコミュニケーションをとったか、現場の作業員から安全に関する知識をどのように吸い上げたか、などがありました。また、当日行った業務についてその内容、時刻を子細に記入することを義務付けました。
結果として、数か月後Yの方から、自発的に退職の申出がありました。
Yへの対応に限らず、問題社員への対応は、「いい加減な仕事は許さない」という会社の強い姿勢と、本人の意識改革に向けての定期的な面談による忍耐強い指導がポイントとなります。
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