共栄ニュース 2026年10月号 「運送現場における労災トラブルと事業所の対応策」

2026/10/02

みなさま、特定社会保険労務士のオフィスきよみ・石原清美でございます。
今回は、運送業の現場で実際に発生した労災トラブルの事例と、事業所がとるべき対応についてお伝えいたします。

■ 押印不要化に伴う「事業所が知らない労災申請」のリスク
行政手続きの見直しに伴い、2021年4月1日より労働基準関係の届出や申請(36協定など)で原則として押印が不要となりました。
これに伴い、労災の申請書(請求書)においても社印が不要となり、労働者本人が事業所の証明なしで直接提出できる仕組みになっています。
もともと労災申請は本人からでも可能でしたが、従来は「事故の発生を事業所に報告していない」「目撃者(現認者)がいない」といった場合、事業所側が証明を保留することができました。
しかし現在は、事業所が把握していない事故であっても、本人の意思だけで申請が進んでしまうリスクが高まっています。

■ 実際のエピソード・事例
倉庫業も手掛けるあるトラック運送業者様での事例です。近年の急な業務拡大に伴い、テレビCM等でも話題のスポットワーク(短時間・単発派遣等)を活用し、急遽数時間だけの作業員を手配して稼働させていました。
ある日突然、労働基準監督署から事業所に連絡があり、書類への記載・提出を指示されましたが、事業所側は何のことか全く分かりませんでした。
詳しく確認すると、「数か月前に2時間だけ勤務した作業員が、その勤務中に手首を負傷した」として直接労災申請を提出していたのです。
当時、本人からの怪我の報告はなく、申請書には「3か月以上の療養が必要」と記載されていました。

また別の事例では、長時間労働(過労死ライン等)について労働者本人が直接申請を行い、事業所の証明がないにもかかわらず、行政側で処理が進みそうになったケースもありました。

■ 事業所としてどう対応すべきか?
上記はいずれも「事業所が把握していないところで届出がされていた」という事例です。
このように後から確認を求められた場合、事業所はどう対応すべきでしょうか。
結論として、「事実のみを書面で行政側(労基署等)へ正確にお伝えすること」が何より重要です。
あやふやな記憶で話を合わせたり、事実と異なる記載をしたりせず、「事故当日の報告はなかった」「目撃者(現認者)の確認が取れていない」「勤務実績は〇時間である」といった客観的な事実のみを正直に記載・報告してください。
不安な点やご判断に迷うことがございましたら、まずは専門家へご相談いただくことをお勧めいたします。

■ 今日からできる!予防策
・短時間・スポット作業員へ作業開始前に「怪我や体調不良時は、どんな軽微なものでも必ずその場で報告する」旨を徹底・誓約してもらう。
・退勤時の「事故・怪我なし」確認の仕組み化として日報等に「本日作業中の負傷・事故はありません」等のチェック欄を設けておく。
 など、簡単ですが無断労災申請を防ぐためにできる事から始めてみてはいかがでしょうか。

※掲載した事例は、プライバシー保護および分かりやすさのため一部事実を変更しております。

著者:社会保険労務士事務所オフィスきよみ  石原 清美


 
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